最近、SNSのX(旧Twitter)では家賃の値上げに関する話題が後を絶ちませんね。
顧問先から「家賃が上がって困っている」という相談を受けることも増えてくるはずですので、今一度状況を整理しておきましょう。
28年ぶりの家賃高騰と税理士の役割

2026年1月、日本の家賃相場は28年ぶりという歴史的な水準に達しました。
特に東京23区では2.1%という高い伸び率を記録しており、固定費の増大に頭を抱える経営者が続出しています。
私たち税理士は、単に帳簿を付けるだけでなく、こうした社会情勢の変化をいち早くキャッチしてアドバイスする姿勢が求められています。
インフレ背景による固定費の増大
家賃が上がっている最大の理由は、世界的なインフレと都市部への人口集中です。
これまでは「デフレだから家賃は上がらない」という常識がありましたが、その前提が根底から崩れ去りました。
資材費や人件費の高騰により、管理会社側も値上げを言い渡さざるを得ない状況に追い込まれています。
顧問先が店舗や事務所を借りている場合、家賃の数パーセントの差が営業利益を大きく圧迫します。
弥生会計やfreeeなどのクラウド会計ソフトで推移を見れば、固定費比率の上昇は一目瞭然です。
数字のプロとして、まずは現在の家賃が収益に見合っているかを冷静に判断する手助けをしたいところですね。
借主が知っておくべき拒否権の知識
SNSで話題になっている通り、日本の借地借家法は借主を非常に強く守っています。
「大家さんから言われたから、すぐに従わないといけない」と思い込んでいる経営者が多いのも事実。
しかし、普通借家契約であれば「正当な理由」がない限り、一方的な値上げや立ち退きは認められません。
不当な値上げに対しては、まず「拒否する権利」があることを伝えましょう。
交渉がまとまるまでは、従来の家賃を支払い続けることで契約を維持できる仕組みもあります。
感情的にならず、法的なルールに基づいた誠実な交渉こそが、事業を継続させる鍵となります。
家賃交渉で家計と事業を守る3選

顧問先が家賃値上げの通知を受け取った際、税理士としてアドバイスすべき具体的なアクションを3つにまとめました。
冷静な交渉とデータに基づいた現状把握が、無駄な支出を抑える最善の策となります。
周辺相場と賃貸借契約書の再確認
まずは契約書の中身を隅々までチェックすることが第一歩です。
特に「賃料改定の条項」がどのようになっているか、定期借家契約になっていないかを確認してください。
周囲の似たような物件の家賃相場を調べ、現在の提示額が妥当かどうかを客観的に評価しましょう。
- 契約期間と更新料の有無を確認する。
- 近隣の空き物件の成約事例をリサーチする。
- 現在の物件の設備状況や老朽化を考慮に入れる。
税理士が活用する収支シミュレーション
家賃の値上げを受け入れた場合、向こう数年間のキャッシュフローにどう影響するかを試算します。
月々の支払いがわずか数千円増えるだけでも、長期的に見れば大きな負担増です。
ExcelやMoneyForwardクラウド確定申告などのデータを基に、損益分岐点の変化を見せることが重要。
視覚的なシミュレーションがあれば、クライアントも「交渉すべきかどうか」を判断しやすくなります。
経営状況が厳しい場合は、家賃交渉だけでなく、他の経費削減案もセットで提示してあげたいですね。
プロの視点が入ることで、大家さん側との話し合いにも説得力が増すというものです。
弁護士や専門家との連携の必要性
もし交渉が難航しそうな場合は、早めに専門家のネットワークを活用しましょう。
税理士は法律の専門家ではありませんが、提携している弁護士や司法書士を紹介することは可能です。
無理に自分たちだけで解決しようとせず、プロの力を借りるのがリスク回避の近道と言えます。
法的な手続き(調停や裁判)が必要になるケースは稀ですが、その可能性を視野に入れて動くことが大切。
準備不足のまま話し合いに臨むと、相手のペースに飲まれてしまいがち。
事前のシミュレーションと情報収集こそが、交渉の勝敗を分けるポイントとなるでしょう。
インフレ下でのコスト管理術

家賃だけでなく、電気代や材料費など、あらゆるコストが上がっているのが2026年の現状です。
これからの税理士には、記帳代行の枠を超えた「コストマネジメントの助言」が期待されています。
インフレに負けない筋肉質な経営体質への転換をサポートしていきましょう。
ITツールを駆使した経費の見直し
無駄なコストを削るには、まず「何にいくら使っているか」をリアルタイムで把握することが不可欠です。
銀行口座やクレジットカードとの連携を強化し、仕訳作業を徹底的に自動化しましょう。
マネーフォワードやfreeeなどのツールを活用すれば、異常な支出の増加にもすぐに気づけます。
家賃のような大きな固定費は一度決まると動かしにくいですが、通信費やサブスクリプション費用は見直しが容易。
小さな節約の積み重ねが、家賃上昇分のコストを相殺することもあります。
顧問先と一緒に管理画面を眺めながら、一つひとつの項目を精査する時間を作ってみてください。
価格転嫁による収益性の確保
コストが上がるなら、売値を上げるという選択肢も避けては通れません。
家賃上昇を「経営努力だけで飲み込む」のには限界があるからです。
どれくらい値上げすれば利益率を維持できるか、具体的な数字を提示してクライアントの背中を押しましょう。
| 対策項目 | 期待できる効果 | 難易度 |
|---|---|---|
| 家賃交渉 | 固定費の現状維持・抑制 | 高 |
| 経費削減 | 変動費の最適化 | 低 |
| 価格転嫁 | 売上総利益の改善 | 中 |
適正な利益が出なければ、家賃を払い続けることすら困難になります。
日本全体が「値上げを受け入れる文化」に変わりつつある今が、価格改定のチャンスでもあります。
クライアントのサービスが持つ本当の価値を再定義し、収益を最大化させるプランを提案しましょう。
賃貸物件を所有する大家さん側への助言

一方で、顧問先の中には不動産を所有し、貸し出している「大家さん」側の方もいらっしゃいます。
借りる側だけでなく、貸す側の視点に立ったアドバイスも、税理士にとっては重要な任務です。
双方の利益バランスを考慮した資産運用の形を模索していく必要があります。
修繕費と借入利息上昇への備え
大家さん側にとっても、家賃値上げは単なる利益追求ではなく、死活問題であるケースが多いです。
建物管理費の高騰や、変動金利でのローン返済額の増加が、キャッシュフローを圧迫しています。
「なぜ値上げが必要なのか」を数字で説明できる資料作成をサポートしましょう。
強引な値上げは、入居者の退去を招き、結果として空室リスクを高めることにもなりかねません。
長期的な入居維持(リテンション)と、収益性の確保のバランスをどう取るかが腕の見せ所。
減価償却費の計算や、大規模修繕に向けた積み立てプランの策定も、プロとしての大切な助言です。
適正な賃料設定と税務上のメリット
市場価格から大きく乖離した家賃設定は、税務調査でも目をつけられるポイントになり得ます。
特に親族間や関連会社間での賃貸借では、適正賃料(時価)の把握が非常に重要。
インフレによって「かつての適正価格」が通用しなくなっている点には注意が必要です。
不相当に低い家賃は贈与税の対象になるリスクもありますし、逆に高すぎれば経費として認められない恐れも。
今のトレンドを反映した「正しい家賃」を導き出し、トラブルのない経営を支援しましょう。
時代の変化に合わせて、柔軟に契約内容を見直す姿勢が、資産を守ることにつながります。
いかがでしたでしょうか。
家賃上昇という現象をきっかけに、顧問先の経営状況を深掘りするチャンスと捉えてみてください。
よくある質問と回答
Answer
いいえ、通知が来たからといって即座に強制されるわけではありません。
賃料の改定には、原則として貸主と借主の「合意」が必要です。
普通借家契約であれば、借主には住み続ける権利(居住権)が強く認められているため、納得がいかない場合は拒否して交渉を申し出ることができます。
まずは冷静に、値上げの根拠となるデータの提示を求めることから始めましょう。
Answer
家賃の改定で折り合いがつかないことだけを理由に、強制退去(立ち退き)をさせることは極めて困難です。
正当な事由がない限り、大家さん側からの解約は認められません。
更新時に契約書へのサインを拒んだとしても、法定更新という形で契約は自動的に継続されます。
ただし、感情的な対立を避けるためにも、話し合いの姿勢は見せておくのが得策ですね。
Answer
従来通りの家賃を支払っている限り、基本的には債務不履行(家賃滞納)には当たりません。
もし大家さんが「値上げ後の金額じゃないと受け取らない」と受領を拒否した場合は、法務局で「供託」という手続きを行うことで、家賃を支払ったものとみなされます。
これを怠って一円も払わない状態が続くと、それこそ退去の口実を与えてしまうので、マネーフォワードなどの履歴に残る形で確実に支払い続けましょう。
Answer
私たちは「数字の根拠」を作るプロとして、交渉を強力にバックアップできます。
例えば、現在の収支状況から見て家賃負担率がどれほど経営を圧迫しているか、周辺の類似物件とのコスト比較表などを作成することです。
ただし、報酬を得て「代理人」として大家さんと直接交渉を行うのは弁護士法に抵触する恐れがあります。
あくまでクライアント自身が交渉するための「武器(資料)」を揃えてあげる立ち位置がベストです。
Answer
近年の物価上昇や固定資産税の増税などは、法的には「借賃増額請求権」を認める正当な理由になり得ます。
ただし、判例では「周囲の相場と比べて著しく不相当になった場合」に限定されることが多いです。
わずかな物価変動ですぐに数パーセントの値上げが認められるわけではなく、建物の老朽化による減価など、マイナス要因も加味して総合的に判断されます。
安易に妥協せず、まずはfreeeや弥生会計で自社の適正なコストバランスを見極めることが先決です。
