最近ニュースでよく耳にするイランを中心とした中東情勢ですが、「自分たちの会計事務所の業務には関係ない」と思っていませんか?
実は、遠く離れた海外の出来事が、私たちの顧問先の経営、そして日々の税務・会計業務にじわじわと影響を与え始めているんです。

今のイラン情勢とは何か

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遠い国のニュースではない

テレビのニュースを見ていると、中東の争いごとは日本から遠く離れた別の世界の話のように感じてしまいますよね。
しかし、結論から言うと、今のイラン情勢は日本の税理士の業務と密接に結びついています。
なぜかというと、現代の世界は経済という見えない糸で複雑に繋がっているからです。

中東地域でトラブルが起きると、世界の大きなお金の流れや物流のルートが劇的に変わります。
それが海を越え、日本に住む私たちの生活や、普段からお付き合いのある顧問先の業績に直撃するというわけです。
数字のプロである税理士として、決して知らんぷりはできません。

世界のお金の流れが変わる

毎月、TKCや達人シリーズなどのシステムを使って顧問先の試算表を作っていると、数字の微妙な変化に敏感になりますよね。
「最近、利益率がジワジワと落ちているな」と感じたら、それは海外の情勢が原因かもしれません。

顧問先の社長さんは、日々変動するコストや売上に頭を悩ませています。
私たちが作っている決算書や試算表の数字の裏には、こうした国際的なニュースや経済の波が隠れているのです。
数字の変化にいち早く気づき、その原因を社長と一緒に考える姿勢。

日本の企業を襲うコスト高

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原油価格の急激な上昇

イランがある中東地域は、世界中に原油を届けるための非常に大切な大動脈です。
そこで争いが起きると、「原油を積んだタンカーがスムーズに運航できなくなるかもしれない」という不安が一気に広がります。
すると、世界中の国や企業が慌てて原油を確保しようとするため、価格がドカンと跳ね上がってしまうのです。

例えば、原油価格が1バレルあたり80米ドルで安定していたものが、有事の際にはあっという間に100米ドルを超えてしまうことも珍しくありません。
原油高は、日本の企業がモノを作るためのあらゆるコストを押し上げてしまいます。
たった20米ドルの違いと思うかもしれませんが、これが毎日大量の燃料を使う企業にとっては、利益が吹き飛ぶほどの致命傷になりかねません。

打撃を受ける業種とは?

一番わかりやすく影響を受けるのは、トラックを毎日走らせる運送業や物流業でしょう。
ガソリンや軽油の値段が上がれば、それだけで利益が大きく圧迫されます。
また、工場を動かすための電気代も上がるため、製造業にとっても非常に大きな痛手です。

  • 運送業:燃料費の急激な高騰により、運賃への価格転嫁が追いつかない
  • 製造業:工場の莫大な電気代や、プラスチックなどの原材料費がアップ
  • 飲食業:食材を配送するための送料が値上がりし、原価率が悪化

経理担当者が弥生会計に毎月の仕訳を入力しながら、「また電気代の請求額が上がってる…」とため息をつく光景が目に浮かびますね。
こういった理不尽なコスト増をどうやって販売価格に転嫁していくかが、今後の経営の大きな課題となります。

顧問先の経営との関係性

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為替変動による円安の進行

世界が不安定になると、投資家は「もしもの時に備えて安全な資産を持っておこう」という心理状態になります。
その結果、世界中のお金が米ドルなどの強い通貨に集まりやすくなる傾向があります。
すると、相対的に日本の円の価値が下がり、現在のような円安にさらに拍車がかかってしまう可能性があるのです。

急激な為替の変動は、輸入に頼る企業の経営を一気に苦しくさせます。
海外から部品や材料を仕入れている顧問先にとっては、まさに死活問題。
昨日まで1万米ドル分の仕入れが適正な価格でできていたのに、為替の影響だけで余計に日本円の支払いコストがかさむようになるからです。

クラウド会計の処理も複雑に

為替が激しく動くと、経理担当者の事務作業も一気に複雑で面倒なものになります。
freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトを使っていれば、銀行口座の明細が自動で連携されるため、入力作業自体はラクかもしれません。
しかし、外貨建ての取引がある場合、決済時や決算期末の為替差損益の計算には、いつも以上に人間の目での確認が必要になります。

発生する事象 顧問先への影響 経理・税理士の対応
原油高の進行 燃料費・材料費の増加による利益の圧迫 コスト上昇の原因分析と、早急な価格転嫁の相談
急激な円安 輸入仕入価格の上昇と資金繰りの悪化 外貨建取引の正確な処理と、為替差損益の入念な確認

決算月ギリギリになってから、「想定以上の為替差損が出てしまい、黒字だと思っていたのに赤字に転落してしまった」なんてことにならないよう、こまめなチェックが欠かせません。
私たちが早めに数字の異常な動きを把握しておくことが大切ですね。

税理士に求められる役割

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資金繰り悪化を予測する

原油高や円安でコストが上がると、会社からお金が出ていくスピードがどんどん速くなります。
売上が増えていないのに出ていくお金ばかりが増えれば、あっという間に手元の現金が減ってしまいますよね。
帳簿上でいくら利益が出ていても、手元に現金がなくなれば会社は倒産してしまいます。

これが世に言う「黒字倒産」の最も恐ろしいところです。
だからこそ、これからの税理士は過去の利益の計算をするだけでなく、未来の資金繰りの状況に常に目を光らせておく必要があります。
「今月はこれだけ仕入れコストが上がったから、数ヶ月後の支払いが少し厳しくなるかもしれないな」と予測する先見の明。

もし、顧問先の資金繰りが怪しいと感じたら、手遅れになる前に先回りしてアドバイスをしましょう。
必要であれば、金融機関への融資の相談をいち早く提案することが私たちの重要な役割です。

経営者の不安を翻訳する

ニュースを見て「なんだか世界が大変そうだな」と漠然とした不安を抱えているのは、経営者も同じです。
でも、そのニュースが自分の会社に具体的にどう影響するのかまでは、なかなかイメージできないことも多いもの。
ここで必要になるのが、世の中の出来事を「顧問先の会社の数字」に翻訳して伝えるスキルです。

「社長、中東でこんなトラブルが起きている影響で、御社の仕入れコストは半年後にこれくらい上がる危険性がありますよ」
そんな風に、遠い国のニュースと目の前の会社の数字を結びつけてあげることで、経営者は初めて具体的な対策を打つことができます。
ただ税金を計算して申告書を作るだけの人から、経営のパートナーへとステップアップする絶好のチャンス。

AIが進化して単純な入力作業が自動化されていく中で、社長の悩みに耳を傾け、一緒に未来の作戦を練ることは人間にしかできません。
試算表を持っていく毎月の面談を、ただの数字の報告会で終わらせない工夫が必要です。
イラン情勢のような世界情勢の話題も交えながら、経営のヒントを提供できる頼もしい税理士を目指していきましょう。

よくある質問と回答

Q1:顧問先から「中東のニュースってうちの会社に関係あるの?」と聞かれたら、どう説明すればいいですか。

Answer
まずは、社長の身近なコストに置き換えてお話しするのが一番伝わりやすいです。
「イラン周辺でトラブルがあると、運送会社が払うガソリン代や、工場を動かす電気代が上がってしまうんですよ」と具体例を出してみましょう。
そうすることで、海の向こうの出来事が自社の利益を直撃する問題なのだと、スッと理解していただけます。

Q2:物価高騰の影響で資金繰りが悪化しそうな顧問先へは、どのようなアドバイスが効果的ですか。

Answer
利益が出ているかどうかにとらわれず、まずは手元のキャッシュ残高を守る対策を最優先で提案してください。
具体的には、値上げによる価格転嫁のシミュレーションを一緒に行ったり、必要であれば金融機関への融資を早めに打診することです。
「まだ大丈夫」と思っている段階で、税理士から先回りして声をかけることが、社長の大きな安心感に繋がります。

Q3:為替が激しく動いている時期、毎月の経理業務で特に気をつけるべきポイントは何ですか。

Answer
マネーフォワードやfreeeなどの自動連係ツールを使っている場合でも、外貨建ての入出金は月に一度必ず人間の目でチェックする癖をつけてください。
為替レートの変動によって、システム上の数字と実際の円換算額にズレが生じ、決算直前に大きな為替差損益が発覚するケースが現場ではよく起きています。
早め早めに誤差を修正しておくことで、正確な経営状況を社長に報告できます。

Q4:社長が目の前の業務で忙しく、海外情勢のリスクに無関心な場合はどう接すればよいでしょうか。

Answer
無理に国際ニュースを見せようとするのではなく、私たちが作っている試算表の数字からアプローチするのがおすすめです。
「先月に比べて、売上に対する原価の割合が少し上がっていますね」と、まずは会社の内部の数字の変化に気づいてもらいましょう。
その原因を探る会話の中で、「実は最近の円安や原油高が影響しているんですよ」と付け加えると、自然と関心を持ってもらえます。

Q5:税務の勉強だけで手一杯なのですが、どうすれば国際情勢などのニュースを効率よく収集できますか。

Answer
すべてを網羅しようとせず、顧問先の業種に関連するニュースだけを拾い読みするスタイルから始めてみましょう。
例えば、運送業のクライアントがいるなら「ガソリン価格」に関する見出しだけをスマホでチェックする、といった具合です。
完璧を目指さず、毎月の面談で「ちょっと役立つ雑談」ができる程度の知識をストックしておく感覚で十分ですよ。