税理士のみなさん、最新記事[Royal Bank of Canada (RBC)におけるAI活用」は読みましたか?
カナダ最大の銀行であるRBCが、AI技術を活用してリスク管理と価格戦略の最適化を実現している事例をまとめた記事です。同行はAI専門の研究機関「RBC Borealis」を設立し、2027年までに7億~10億ドルの企業価値創出を目指している点が注目されます。
元記事を5つのポイントで要約
- RBCは950名の研究者を擁するAI専門機関「RBC Borealis」を2016年に設立し、50億ドル以上の技術投資を実行
- 2027年までに7億~10億ドルのAI由来企業価値創出という明確な数値目標を設定
- 詐欺対策では年間11兆件のセキュリティイベントを解析し、従来の静的ルールから適応型リアルタイム評価システムに移行
- 複数金融機関と連携した「フェデレーテッド学習」により、顧客データを共有せずに詐欺パターンを検出
- AI取引プラットフォーム「Aiden」で深層強化学習を活用し、リアルタイム市場データに基づく最適な取引判断を実現
税理士業界でも進むAI詐欺対策の重要性

税理士事務所では日々、お客様の財務情報や個人情報を取り扱っているため、詐欺被害のリスクは決して他人事ではありません。RBCの事例から学べる点は数多くあります。
AIを活用した不正検出システムの導入
RBCでは年間11兆件のセキュリティイベントを解析し、従来の静的なルール型システムから適応型のリアルタイム評価へと移行しました。税理士事務所でも、従来の手動チェックに加えて、AIによる不正検出システムの導入を検討することが重要になってきています。
例えば、弥生会計やfreeeなどの会計ソフトウェアでも、異常な取引パターンを検出する機能が搭載されています。これらの機能を活用することで、お客様の帳簿上の不審な動きを早期に発見できる可能性があります。
複数機関との連携による情報共有
RBCが実践している「フェデレーテッド学習」は、顧客データを直接共有せずに、複数の金融機関が協力して詐欺パターンを学習する仕組みです。税理士業界でも、守秘義務を維持しながら、業界全体で詐欺や不正の手口に関する情報を共有する体制作りが求められています。
日本税理士会連合会や各地域の税理士会では、既にサイバーセキュリティに関する研修や情報提供を行っています。これらの取り組みに積極的に参加することで、最新の詐欺手口や対策方法を学べるでしょう。
リアルタイムデータ分析の活用法

RBCのAIシステムは、リアルタイムで膨大なデータを処理し、瞬時に意思決定を行っています。税理士業務においても、リアルタイムデータ分析の重要性は高まっています。
月次決算の精度向上とスピードアップ
従来の月次決算では、データの収集から分析まで相当な時間を要していました。しかし、クラウド会計ソフトとAI技術を組み合わせることで、リアルタイムでの財務状況把握が可能になり、お客様により迅速で正確なアドバイスを提供できます。
具体的には、MFクラウド会計やfreee、弥生会計オンラインなどで銀行口座やクレジットカードの自動連携機能を活用し、日々の取引データを即座に帳簿へ反映させることが可能です。これにより、月末を待たずとも現在の財務状況を把握できます。
予測分析による経営支援
RBCのAiden取引システムが市場データを基にリアルタイムで最適な判断を行うように、税理士業務でも予測分析技術を活用した経営支援が注目されています。
売上予測や資金繰り予測、税額シミュレーションなど、過去のデータパターンを学習したAIが将来の数値を予測することで、お客様の経営判断をより的確にサポートできるようになります。
顧客データ保護とプライバシー配慮

RBCの事例で特に注目すべきは、AI導入に際してプライバシー保護を重視している点です。税理士業界では守秘義務が極めて重要な要素であり、AI活用においてもこの原則を守ることが不可欠です。
データ暗号化と匿名化技術の導入
RBCでは、顧客の機密データを保護しながらAI学習を行うための技術を導入しています。税理士事務所でも、お客様の個人情報や財務データを適切に保護しながらAI技術を活用する仕組み作りが重要になってきています。
クラウド会計ソフトを選択する際は、データの暗号化技術や ISO27001認証の取得状況、セキュリティ監査の実施状況などを確認することが大切です。また、事務所内での情報管理体制も見直し、USBメモリの使用制限やパスワード管理の徹底などの基本的な対策を怠らないようにしましょう。
AIツール利用時の注意点
最近では、ChatGPTやClaude、Google Bardなどの生成AIを業務に活用する税理士も増えています。しかし、これらのツールに顧客の機密情報を直接入力することは、情報漏洩のリスクを伴います。
AI活用時は、個人情報や具体的な企業名を削除し、数値のみを使用するなど、情報の匿名化を徹底することが重要です。また、事務所としてAI利用に関するガイドラインを策定し、スタッフ全員が適切な利用方法を理解することも必要でしょう。
投資対効果の測定と業務効率化
RBCが2027年までに7億~10億ドルの企業価値創出という明確な数値目標を掲げているように、AI投資には具体的な効果測定が欠かせません。
業務時間短縮の定量化
税理士事務所でAI技術を導入する際も、投資対効果の測定は重要な要素です。帳簿作成時間の短縮、申告書作成の効率化、顧客対応の迅速化など、具体的な業務改善効果を数値で把握することが大切です。
例えば、自動仕訳機能により月次処理時間が50%短縮された場合、その時間を顧客との面談や経営アドバイスに充てることで、付加価値の高いサービスを提供できます。これにより、顧客満足度の向上と事務所の収益性向上を同時に実現できるでしょう。
新サービス開発への展開
RBCのAiden取引プラットフォームのように、AI技術を活用した新サービスの開発も視野に入れる価値があります。
税理士事務所においても、AIを活用したキャッシュフロー予測サービスや、業界別経営指標との比較分析サービスなど、従来の税務申告や記帳代行を超えた付加価値サービスの提供が可能になります。これらの新サービスは、競合他社との差別化要因となり、事務所の成長につながる可能性があります。
AI技術導入のロードマップ作成

RBCのように大規模なAI投資を行うことは困難でも、段階的にAI技術を導入していくことは可能です。税理士事務所の規模に応じた導入戦略を検討してみましょう。
小規模事務所向けの導入ステップ
個人事務所や小規模事務所では、まずは既存の会計ソフトに搭載されているAI機能を活用することから始めましょう。自動仕訳、自動消込、異常値検出などの機能を段階的に導入し、効果を確認しながら範囲を拡大していくアプローチが現実的です。
| 導入段階 | 対象業務 | 期待効果 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 自動仕訳・自動消込 | 入力時間30%短縮 |
| 第2段階 | 異常値検出・チェック機能 | ミス発見率向上 |
| 第3段階 | 予測分析・レポート自動生成 | 付加価値サービス提供 |
中・大規模事務所向けの戦略的導入
職員数が多い事務所では、業務プロセス全体を見直しながら、AI技術を戦略的に導入することで大幅な効率化を実現できます。
顧客管理システム(CRM)とAI技術を組み合わせることで、顧客ニーズの予測や最適なサービス提案が可能になります。また、スタッフの業務負荷分散や専門性向上のための教育プログラムも併せて検討することで、事務所全体の競争力向上につながるでしょう。
税理士業界においても、RBCの事例のようにAI技術を活用した業務改革は避けて通れない道となっています。重要なのは、顧客の利益を最優先に考えながら、段階的かつ計画的にAI技術を導入していくことです。技術の進歩に対応しながらも、税理士としての専門性と信頼関係を大切にした業務運営を心がけることで、AI時代においても価値ある存在として活躍し続けることができるでしょう。
よくある質問と回答
Answer
初期費用は導入する規模や内容によって大きく異なります。小規模事務所であれば、既存のクラウド会計ソフト(freee、MFクラウド、弥生会計オンラインなど)に搭載されているAI機能を活用することで、月額数千円から1万円程度で始められます。専用のAIツールを導入する場合は、初期設定費用として10万円~50万円程度、月額利用料として数万円が必要になるケースが多いでしょう。まずは既存ソフトの機能を最大限活用し、効果を確認してから段階的に投資を拡大していくアプローチが現実的です。
Answer
はい、適切な対策を取らないと守秘義務違反のリスクがあります。特にChatGPTなどの汎用AI を業務で使用する場合、顧客の氏名や企業名、具体的な財務数値などを直接入力すると、データが学習に使用される可能性があります。AI活用時は必ず個人情報を削除し、数値のみを使用するか、抽象化したデータで質問することが重要です。また、事務所として「AI利用ガイドライン」を策定し、スタッフ全員が適切な利用方法を理解することをおすすめします。セキュリティが確保されたクラウド会計ソフトやプライベート環境で動作するAIツールを選択することも有効な対策となります。
Answer
AIは税理士の仕事を奪うのではなく、業務の質を高めるパートナーとして機能します。確かに単純な仕訳入力や計算作業はAIに置き換わっていくでしょう。しかし、税制の解釈、経営判断へのアドバイス、複雑な税務相談、顧客との信頼関係構築といった人間にしかできない業務の重要性は増していきます。RBCの事例でも、AIは人間の判断を支援するツールとして位置づけられています。むしろAIによって定型業務から解放されることで、より付加価値の高いコンサルティング業務に時間を割けるようになり、税理士としての専門性を発揮する機会が増えると考えられます。
Answer
AI による不正検出の精度は、学習データの量と質、システムの設計によって大きく変わります。一般的に、大手会計ソフト会社が提供するAI機能は、膨大な取引データから異常なパターンを検出する能力を持っており、人間が見落としがちな不自然な取引や数値の矛盾を発見できます。ただし、AIは過去のデータパターンに基づいて判断するため、新しい手口の不正や文脈を理解する必要がある判断には限界があります。そのため、AIの検出結果を参考にしつつ、最終的な判断は税理士の専門知識と経験に基づいて行うことが重要です。AIと人間の知見を組み合わせることで、最も効果的な不正検出体制を構築できます。
Answer
顧客への説明では、AI導入のメリットを具体的に伝えることが大切です。「AI技術を活用することで、月次資料の提供が5日早くなり、より迅速な経営判断をサポートできます」「自動チェック機能により入力ミスが減り、正確な財務情報を提供できます」といった形で、顧客が実感できる利点を強調しましょう。同時に、データのセキュリティ対策についても丁寧に説明し、安心感を与えることが重要です。「お預かりした情報は暗号化され、厳重に管理されています」「AIはあくまで補助ツールであり、最終的な判断は税理士が責任を持って行います」と伝えることで、信頼関係を維持しながらAI活用を進められます。
