税理士のみなさん、話題になっている外国人労働者過去最多257万人超、懸念の声高まるというニュースは見ましたか?
このニュース、実は税理士業務に直結する重大な変化の前触れなんです。
外国人労働者257万人時代、税理士が知っておくべき現実

2025年10月末の統計で、外国人労働者数が257万1037人に達しました。
13年連続で過去最多を更新し続けています。
国籍別ではベトナム人が60万人超で最多、次いで中国、フィリピンと続く状況です。
高市首相は特定技能と新制度「育成就労」の受け入れ上限を2028年度末まで123万人に設定しましたが、ひろゆき氏らからは「低収入移民推進」との批判も出ています。
2月8日の衆院選では外国人政策が争点の一つとなっており、今後も外国人労働者の増加は避けられない流れでしょう。
つまり、税理士の顧問先企業でも外国人従業員を雇用するケースが確実に増えていくということです。
そして外国人本人からの税務相談も増えてきます。
freeeやマネーフォワードでは解決できない問題
クラウド会計ソフトのfreeeやマネーフォワード クラウド会計を使えば、日本人の給与計算や年末調整は自動化できます。
しかし外国人労働者の税務処理は、こうしたツールだけでは対応しきれません。
居住者か非居住者かの判定、租税条約の確認、国外所得の申告など、人間の判断が必要な場面が山ほど出てきます。
弥生給与を使っていても、外国人従業員の扶養控除判定でミスをすれば、追徴課税のリスクが発生するわけです。
「うちには関係ない」では済まされない
「うちの顧問先は中小企業ばかりだから外国人雇用とは無縁」と思っていませんか。
実際には飲食業、介護業、建設業、製造業といった中小企業こそ、人手不足で外国人労働者を積極的に受け入れています。
来年度から始まる育成就労制度では、これまで以上に幅広い業種で外国人を受け入れることになります。
顧問先から「外国人を雇いたいんだけど、税務的に何か注意することある?」と聞かれたとき、即答できますか。
税理士が外国人対応で困る5つの場面

外国人クライアントや外国人従業員を抱える企業を担当すると、想定外のトラブルに遭遇します。
ここでは実務で本当に困る場面を5つに絞って紹介しましょう。
言葉の壁は想像以上に深刻
「Google翻訳があるから大丈夫でしょ」と思ったら大間違いです。
税務用語は直訳すると意味が変わってしまいます。
例えば「税額控除」を英語にするとき、tax creditが正解ですが、tax deductionと訳してしまうと「損金算入」という全く違う意味になります。
「非課税」「免税」「不課税」といった日本特有の概念は、外国語に正確に翻訳できません。
実際、確定申告書類を見た外国人労働者から「難解な日本語の説明に騙されている気がする」という声も上がっています。
税理士側は丁寧に説明したつもりでも、相手には伝わっていないケースが多発しているんです。
居住者・非居住者の判定ミスは命取り
外国人の税務で最も重要なのが、居住者か非居住者かの判定。
この判定を間違えると、源泉徴収額が大きく変わります。
| 区分 | 源泉徴収税率 | 年末調整 | 所得控除 |
|---|---|---|---|
| 居住者 | 累進税率 | 対象 | 全て適用可能 |
| 非居住者 | 一律20.42% | 対象外 | 3つのみ(雑損・寄付金・基礎) |
判定基準は「国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人」が居住者です。
ところが入国から1年未満でも、その後1年以上日本で勤務する予定があれば居住者として扱われます。
顧問先の経理担当者がこの判定を理解しておらず、非居住者として処理すべき人を居住者として年末調整してしまった。
あるいはその逆で、居住者なのに非居住者として一律20.42%で源泉徴収してしまった。
こうしたミスは税務調査で確実に指摘され、追徴課税につながります。
租税条約と納税管理人、知らないと損する制度

外国人の税務には、日本人相手では使わない特別な制度があります。
知っているかどうかで、クライアントの納税額が大きく変わってきます。
租税条約の届出を忘れると免税が受けられない
日本は各国と租税条約を締結しており、条約の規定は国内法より優先されます。
例えば特定の国からの留学生や研修生は、一定の条件下で給与が免税になることがあります。
ただし免税措置を受けるには、「租税条約に関する届出書」を給与支払者経由で税務署に提出する必要があります。
この届出を忘れると、本来免税のはずの給与から源泉徴収されてしまい、クライアントが無駄な税金を払うことになるんです。
しかも租税条約は国ごとに内容が違います。
ベトナムとの条約、中国との条約、フィリピンとの条約、それぞれ規定が異なるため、国籍を確認して個別に対応しなければなりません。
帰国する外国人には納税管理人が必須
外国人従業員が帰国して非居住者になる場合、日本に所得が残るなら納税管理人の選任が必要です。
例えば不動産を所有したまま帰国する、あるいは出国前の確定申告が未了のケースが該当します。
納税管理人届出書の提出期限は「出国日まで」という厳格なルール。
この期限を過ぎると、後の税務処理が非常に複雑になります。
さらに不動産を所有したまま帰国する場合、所得税だけでなく固定資産税の納税管理人も別途選任が必要という点を見落としがちです。
住民税についても同様の手続きが必要で、税理士側が「出国予定日を教えてください」と事前確認する体制が求められます。
扶養控除と海外送金、意外な落とし穴

外国人の税務で意外とトラブルになるのが、扶養控除の判定と海外所得の申告です。
日本人相手なら簡単な手続きが、外国人になると途端に複雑化します。
海外にいる親族の扶養控除は書類の山
外国人労働者が母国にいる親や子どもを扶養に入れたい場合、通常の扶養控除申告だけでは不十分です。
以下の書類を全て揃える必要があります。
- 親族関係を証明する書類(戸籍謄本に相当するもの)
- 送金証明書(銀行の海外送金記録)
- 上記書類の日本語翻訳
母国の役所から取り寄せた書類を日本語に翻訳する作業だけで、数週間かかることもあります。
さらに送金証明書は、毎年継続的に仕送りしている事実を証明しなければなりません。
年末調整の時期になって「母国の親を扶養に入れたい」と言われても、書類が間に合わないケースが続出しています。
税理士側から顧問先に「外国人従業員には早めに扶養控除の確認をしてください」と促す必要があるでしょう。
海外給与の申告漏れは税務調査で狙われる
海外の会社から給与を得ている外国人が日本で働く場合、その海外給与は源泉徴収されません。
本人が自ら確定申告する義務があります。
ところが多くの外国人は「日本の会社から給料をもらっているから、他の所得は申告しなくていい」と誤解しています。
こうした海外所得の申告漏れは、税務当局の重点調査対象です。
国外送金等調書という制度があり、税務署は海外への送金状況を把握しています。
外国人労働者を雇用している企業に対して、「この従業員、海外から給与をもらっていませんか」と税務調査で聞かれるケースが増えているんです。
税理士としては、外国人従業員の採用時に「海外から給与を得ていないか」を明示的に確認するよう、顧問先に指導する必要があります。
2027年スタートの育成就労制度、準備は今から
2027年4月から、技能実習制度に代わって「育成就労制度」が始まります。
この新制度、税理士業務にも影響が出てきます。
育成就労制度とは何か
育成就労制度は、基本的に3年間の就労を通じて特定技能1号レベルの人材を育成する仕組みです。
従来の技能実習制度との大きな違いは、以下の点。
| 項目 | 技能実習制度 | 育成就労制度 |
|---|---|---|
| 目的 | 国際貢献 | 人材確保と育成 |
| 転籍 | 原則不可 | 一定条件で可能 |
| 試験 | 任意 | 義務付け |
育成開始から1年経過後と育成終了時までに試験が義務付けられ、企業側がその対応を管理しなければなりません。
登録支援機関との契約も必要になり、企業の事務負担が増えます。
税理士に求められる新たな役割
「税理士は税務だけやっていればいい」という時代は終わりました。
育成就労制度で外国人を受け入れる顧問先企業に対して、以下のような助言が求められます。
- 外国人労働者の給与設定は適正か(最低賃金、同一労働同一賃金の観点)
- 監理支援機関への委託費用は適切に経費計上されているか
- 外国人従業員の社会保険加入手続きは完了しているか
特に給与計算ソフトで外国人従業員を登録する際、居住者・非居住者の区分を正しく設定しないと、源泉徴収額が狂います。
freee人事労務や弥生給与を使っている顧問先には、設定方法を具体的に指導する必要があるでしょう。
2027年4月までに、外国人労働者の税務に関する基礎知識を身につけておくことが、これからの税理士には必須です。
今から準備を始めても決して早すぎることはありません。
外国人労働者257万人時代は、税理士にとって大きなチャンス。
適切な知識とツールを持っていれば、顧問先企業から頼られる存在になれます。
逆に対応できなければ、他の税理士に顧問先を奪われるリスクもあるでしょう。
近畿税理士会では「外国語対応税理士紹介制度」がスタートしており、英語・中国語・韓国語に対応できる税理士を紹介しています。
完璧な外国語対応ができなくても、基本的な税務知識さえ押さえておけば、翻訳ツールや通訳を活用して対応可能です。
まずは自分の顧問先に外国人従業員がいないか確認し、いる場合は居住者・非居住者の判定から始めてみてください。
小さな一歩が、外国人対応という新しいフィールドを切り開く第一歩になります。
よくある質問と回答
Answer
まず最初に確認すべきは、その外国人が「居住者」か「非居住者」かの判定です。在留カードを見て在留期間を確認し、入国日から1年以上日本に在留する予定があるかどうかをチェックしてください。次に雇用契約書を確認し、勤務予定期間を把握します。その上で、給与計算ソフト(freee、マネーフォワード、弥生給与など)に正しく登録されているか確認しましょう。特に源泉徴収税率の設定が間違っていないか注意が必要です。また、海外から給与を得ていないか、国籍は何か、本国に扶養親族がいるかなど、基本情報をヒアリングして記録に残しておくことをお勧めします。
Answer
これは実務で頻繁に起こるトラブルです。外国人従業員が扶養控除申告書の内容を理解していない可能性が高いです。給与支払者(企業)側から、翻訳ツールを使うなど、可能な限り簡潔に説明してあげてください。ただし本国に扶養親族がいる場合、日本語の扶養控除申告書だけでなく、親族関係を証明する書類や送金実績を示す書類が必要になります。この場合は早めに税理士側から顧問先に「外国人従業員の扶養控除の対応は時間がかかるので、今から準備してください」とアラートを出すことが重要です。無理に控除を認めると後々税務調査で指摘される可能性があります。
Answer
非常に重要なポイントです。まず出国日を確認してください。その出国日までに「納税管理人届出書」を税務署に提出する必要があります。特に不動産を所有したまま帰国する場合は、所得税だけでなく固定資産税の納税管理人も市区町村に届け出なければなりません。さらに住民税についても同様の手続きが必要です。納税管理人は通常、税理士や会計事務所のスタッフが務めることになります。出国日を過ぎてからこの手続きをしようとしても、後々の税務処理が複雑になってしまいます。出国予定が判明した時点で、すぐに手続きを開始しましょう。
Answer
租税条約は、二重課税を防ぐために日本と各国が締結している協定です。特定の国の人が日本で働く場合、条約の規定によっては一定の給与が免税になることがあります。ただし免税措置を受けるには、「租税条約に関する届出書」を給与支払者経由で税務署に提出する必要があります。この届出を忘れると、本来免税のはずの給与から源泉徴収されてしまい、クライアント側が無駄な税金を払うことになります。ベトナム、中国、フィリピンなど、国によって条約内容が異なるため、まずは従業員の国籍を確認して、その国との租税条約内容を調べることをお勧めします。分からなければ、国税庁のホームページで確認できます。
Answer
育成就労制度は現在の技能実習制度に代わる新制度で、基本的に3年間の就労を通じて外国人を育成します。税理士にとって重要なのは、この制度で受け入れる外国人の給与が適正に計算されているか、社会保険に加入しているか、監理支援機関への委託費用が正しく経費計上されているかという点です。給与計算ソフトで外国人従業員を登録するとき、居住者・非居住者の区分を正しく設定しないと、源泉徴収額が狂います。2027年4月までに、最低限の外国人税務知識を身につけておくことが必須です。全国税理士会では研修やセミナーを開催していますので、そうした機会を活用して準備しておくことをお勧めします。完璧な対応ができなくても、基本的な知識さえ押さえておけば、他の専門家と連携して対応できます。
