税理士のみなさん、最新記事「CAMIA privacy attack reveals what AI models memorise」は読みましたか?
AIとデータの扱いに関する新しい研究結果が紹介されており、私たち税務や会計の実務にとっても無関係ではありません。特に顧客情報や社内データを扱う立場の方にとって、AI利用時にどんなリスクがあるのかを理解しておくことは非常に重要です。
まずは元記事を5つのポイントで要約します。
- AIモデルは訓練データを「記憶」してしまい、個人情報や社内情報を再現する危険がある。
- 研究者が新たに開発した「CAMIA攻撃」はAIの記憶を見抜ける強力な攻撃手法。
- 従来の攻撃よりも2倍近く高い精度で、モデルが学習データを覚えているか判定できる。
- 情報漏洩リスクは医療データや企業内部メールなどでも懸念が高まっている。
- AI導入を進める企業には、プライバシー保護や利用ルールの整備が不可欠。
ここからは税理士・会計士のみなさんに向けて、この記事の内容をどのように活かせるかを整理します。クラウド会計ソフトやチャットボット、AI入力補助ツールを利用する際に知っておくべき注意点も含めて解説していきます。
AIが記憶するリスクとは?

顧客データが漏れる可能性
AIが学習した情報をそのまま再現してしまうと、全く関係のない第三者に顧客の会計データや取引内容が出力される可能性があると言われています。 例えば、税務顧問先の決算書や仕訳データが何らかの形でAIに再現されてしまえば、守秘義務違反に直結します。これは、ChatGPTのような文章生成AIや、会計事務所内で試験的に導入されるAIレポート作成ツールでも起こり得る問題です。
クラウドツール利用時の注意
freeeやマネーフォワードクラウド、TKCシステムといったクラウド会計サービスはいずれもデータ管理の安全性を表に出していますが、AI機能を利用する場合は追加の注意が必要です。AI入力補助や自動仕訳の推薦機能が進化すれば、その裏側にある「モデル」が何を覚えているかを意識することが求められます。
CAMIA攻撃の仕組み

従来の手法より強力
これまでの攻撃では、AIが学習したデータかどうかを特定する精度は限定的でした。しかしCAMIAは、予測が曖昧なときほど「どれだけ記憶に頼っているか」を見抜くことができる仕組みです。そのため、訓練データに依存している部分を高精度で検出できます。
会計分野で考えられるケース
もし社内や顧客様のデータを用いて独自のAIを訓練する場合、CAMIAのような攻撃手法により「どのデータを学習に使ったのか」が外部に推測されてしまうリスクがあります。これは試算表や給与台帳といった特定顧客のデータが外に露出する可能性を意味します。
税務実務に潜むリスク

社内メールや文書の学習
企業によっては、社内のナレッジやメールをAIに学習させて業務効率化を図ろうとするケースがあります。しかしメール本文や内部稟議書を埋め込むと、それが外部に再現されるリスクが生じます。特に経理部門や会計事務所でのクライアント対応記録は、非常にセンシティブな情報です。
監査・巡回業務での注意
AIを使って監査調書や巡回監査のレポート作成を支援するアイデアは魅力的です。ただし、入力データがAIの内部に残る可能性を考えると、情報管理ルールを決めずに使うのは危険です。守秘義務違反に該当すれば一瞬で信用を失いかねません。
実務での対応策

AI利用時のルール策定
会計事務所や企業の経理部門は、AIサービスを使う場合にどのような情報を入力して良いか、ガイドラインを明確にすることが重要です。例えば「顧客の氏名や住所は入力しない」「決算書の全文を貼り付けない」といった基本的なルールでも効果があります。
監査ログやツールの使い分け
AIによる効率化を図る際は、すでにセキュリティ対策が強化されたツールを優先的に利用するのが賢明です。加えて、TeamsやSlackなどの社内チャットでAIを利用する場合でも、データが外部のAIベンダーに送られる仕組みを確認してから使いましょう。
税理士が取るべき姿勢
顧客への説明責任
税務や会計にAIを活用する動きは主流になりつつありますが、顧客から「本当に安全なのか」と聞かれたときに答えられることが信頼につながります。そのためには、今回のようなAIのリスク情報を押さえておく必要があります。
AIとの付き合い方
AIは便利な仕訳補助、決算期日管理、税制改正情報の整理といった分野で大きな力を発揮しています。ただし、その裏でデータ記憶や漏洩リスクがあることを理解し、あくまで「補助的なツール」として使いこなす姿勢が大切です。
AIは税理士業務の効率化を支える一方で、個人情報や顧客データ管理の新たなリスクも抱えています。
クラウドやAIツールを使うときほど「何を入力していいのか」「どのように利用すべきか」を意識することが、今後の会計実務を守るために欠かせません。
セキュリティ対策が最優先
AI導入時の注意点
経理・会計分野でAIツールを導入する場合、セキュリティとプライバシー保護が欠かせません。 ツール選定時は、通信の暗号化やアクセス権限の細分化、定期的なログ管理が求められています。 freeeやマネーフォワードクラウド、弥生会計などの有名会計ソフトでも、AI機能や自動仕訳などを導入する際には情報の流出経路や運用ポリシーに目を配りましょう。
情報漏洩事例から学ぶ
AIシステムの利用時に、誤ったプロンプトや意図しない指示によって、内部データが外部に出てしまう事故が報告されています。 これには顧客名や取引内容、社内メール、決算書の一部が漏洩した事例も含まれており、多くの企業が被害に遭いました。 セキュリティ監査や運用体制の定期見直し、入力フィルターの強化が重要な防御策です。[1][5]
| ツール名 | 主なAI活用領域 | セキュリティ注意事項 |
|---|---|---|
| freee | 自動仕訳/経費精算 | 機密情報を直接入力しない |
| マネーフォワード | 領収書自動読取/振替伝票推薦 | アクセス権限の定期見直し |
| 弥生会計 | AI領収書解析/入力補助 | データ暗号化の有無をチェック |
AI監査・不正検知にも活用
AI監査で業務の質向上
大手会計法人では、AIを活用した監査ツールが導入され、財務データから異常を検知したり、不正取引の早期発見が進められています。 例えば、WebDolphinやTBAD、GLADなどのツールは、不正会計データのパターン分析や異常検知に強みがあります。 人の判断と機械学習を組み合わせて精度を高めている点が特徴です。[2][3]
リスク評価とBCP対策
事業拠点や業務プロセス全体をAIで可視化することで、リスクの高い部門やボトルネックを見つけやすくなっています。 会計データから減損リスクになる店舗や不自然な損益をAIで絞り込む事例が増えており、BCP(事業継続計画)にも活用が進んでいます。 将来の監査はAIと連携することが前提になるでしょう。[2]
現場が注意すべきこと
入力内容の精査とルール作成
AI活用時は、社内で「入力して良い情報・してはいけない情報」を明確に区分したガイドラインが必須です。 オプトアウト設定やAPI利用など、技術的な工夫も有効です。 現場担当者が「何気なく貼り付けたデータ」がAIに永久保存されてしまう可能性も考慮しましょう。[7][8]
従業員教育と運用管理
セキュリティは技術対策だけでは不十分です。従業員教育や注意喚起、週次・月次での運用見直しが欠かせません。 AIによる業務効率化と守秘義務・個人情報保護は同時に進めるもの。 関連ワードとリンクする対応例も含め、現場でできることをリストアップします。
- 「機密性の高いデータをAIに直接入力しない」
- 「AIツールの権限管理・ログ確認を必ず行う」
- 「外部連携するAPIのアクセス制限を強化する」
- 「AIベンダーのセキュリティ方針・運用体制を定期監査する」
- 「クラウド会計ツールの自動アップデートや脆弱性情報に注目する」
まとめと今後の展望
AI活用の本質と安全運用
AIは決して「万能な魔法の道具」ではありません。 便利な機能の裏には必ずリスクが存在します。 税理士、会計士、経理担当者はAI時代にふさわしい情報管理とセキュリティ意識を持つことが、顧客信用と自分自身の業務を守る最良の策となります。
ツール進化による期待と課題
今後はAIの不正検知機能やセキュリティ対策がますます進化するでしょう。 最新事例やベンダーの発表にもアンテナを張り、安全なAI利用を業務改善の一歩として取り入れていく姿勢が大切です。
AI活用は効率化とリスク管理を「両輪」で進めることが重要です。
会計事務所や経理現場がAIツールで守るべきこと、進めてよいことを一緒に考えていきましょう。
よくある質問と回答
Answer 適切なAIツールを選び、運用ルールを守れば安全に活用できます。 ただし、無料ツールや公開AIサービスに機密情報や個人情報を入力すると、学習データとして他者に情報が流用されるリスクがあるため注意が必要です。 専用の業務用AIや法人向けプランを選ぶことでリスクを減らせます。
Answer 個人情報・顧客情報や未公開データはAIに直接入力しないことが重要です。 社内で「入力して良い情報・してはいけない情報」を明確に分けたガイドラインを作成し、従業員教育も徹底しましょう。 匿名化や一部データをマスキングして使うのも有効です。
Answer 最も多いのは、社外秘の資料や契約書、取引先情報をAIに直接入力してしまい、後からAIの学習を通じて外部に再現されたケースです。 また、チャットボットやFAQ自動生成系ツールでも、誤って社員情報や取引先名が流出した事例が報告されています。 無料ツールや公開APIの利用時ほど慎重に対応しましょう。
Answer AIは過去のデータや学習結果に基づいて回答するため、学習元に誤りや偏りが含まれている場合、不正確な帳票や判断ミスが発生することがあります。 AIが生成した内容は必ず人間が確認し、社内でダブルチェックや検証体制を整えて運用することが欠かせません。
Answer アクセス権限の設定・運用や、定期的なセキュリティ教育、契約情報の更新・管理が重要です。 社内のAI利用ガイドラインを明文化し、従業員が守るべきルールや万が一の事故対応マニュアルを必ず整備しましょう。 法人向けのクラウド会計サービスや、セキュリティ対策が強化されたAIツールを優先的に導入することも大切です。
