2025年も年の瀬。税理士のあるあるまとめ
毎年この季節がやってくると、税理士業界は一気に忙しさが頂点に達します。
年末から春にかけての繁忙期は、単なる多忙さではなく、独特のストレスと工夫が詰まった時間です。
ここでは、税理士が直面する「あるある」を整理しながら、実践的なアドバイスをまとめました。
忙しい季節が来たら、資料提出の習慣が試される

顧問先からの遅延は毎年決まっている
年末調整と確定申告の時期が近づくと、多くの税理士が経験する悩みがあります。
それは、顧問先からの必要書類が期限までに届かないということです。
毎年のことだからこそ、「今年もあの企業からは遅れるだろう」と予測がつくほどです。
資料の提出が遅れると、限られた時間の中で申告書を仕上げなければならず、申告期限ギリギリの対応を余儀なくされます。
最も困るのは、期限が近づくにつれて税理士側も焦り始め、ミスが増えるリスクが高まることです。
本来なら丁寧に検討できる節税対策も、時間がないために後回しになってしまいます。
資料の提出タイミングを意識することは、税理士との信頼関係を築く第一歩です。
期日を守ることがプロフェッショナルの証
税理士側からすれば、「決められた日までに資料をください」という依頼は何度も繰り返しています。
それでも守られないケースが多いのは、なぜでしょうか。
一つには、クライアント側が「年末調整なんて毎年のこと。期限までに出せば大丈夫」と軽く考えがちな点があります。
しかし、税理士にとっては、複数のクライアントの資料がすべて揃わない限り作業を進められません。
もし期日に間に合わない事情があれば、早めに連絡することが何より重要です。
その一報があるかないかで、税理士の対応も変わってきます。
コミュニケーションを密にとることで、お互いの理解が深まり、良好な関係が維持できるのです。
年末調整から確定申告、そして決算へ。怒涛の業務スケジュール

12月から5月までの繁忙期は避けられない現実
税理士業界の繁忙期は、業界や企業の都合ではなく、税務署の期限によって決められています。
具体的には、以下のスケジュールが毎年決まっています。
| 時期 | 主な業務 | 期限 |
|---|---|---|
| 12月~1月 | 年末調整、法定調書、償却資産税申告 | 1月31日 |
| 2月~3月 | 個人の確定申告 | 3月15日 |
| 3月~5月 | 3月決算法人の申告書作成・提出 | 5月末 |
| 11月 | 9月決算法人の申告書作成・提出 | 11月末 |
年末調整だけなら1ヶ月で終わります。
しかし、その直後に個人の確定申告が控えています。
さらに、3月決算の法人が全国で最も多いため、確定申告と法人決算がほぼ並行して進むことになります。
同時に、通常の月次決算や巡回監査も止まりません。
営業日の制限も多く、12月は年末休暇で稼働日が少なくなる中、通常業務と並行して年末調整が加わります。
この時間的な緊張感の中で、質の高い仕事をすることが求められるのです。
年1回の業務だから、毎年が新しい
確定申告と年末調整は、毎年1回ずつの業務です。
だからこそ、スタッフが作業に慣れる間もなく、新しい業務をこなしている感覚に陥ります。
前回やったのは1年前。
その1年間で制度が変わっていることも珍しくありません。
毎年、書類の様式が変更されたり、税制が改正されたりします。
つまり、税理士事務所は毎年、「新しい業務」にチャレンジしているのと同じ状態なのです。
経験値があっても、細部の変更に対応する手間は避けられません。
クライアント対応の工夫が、繁忙期を乗り切る鍵になる

定期的な巡回監査が業務の分散を可能にする
多くの税理士事務所は、顧問契約に基づいて毎月1回以上、クライアント企業を訪問します。
これを「月次巡回監査」といいます。
この月次巡回監査の実施有無が、繁忙期の業務負荷を大きく左右します。
期中から定期的に記帳内容をチェックしていれば、決算時期の業務がぐっと楽になるのです。
月次巡回監査で行うべき内容は以下の通りです。
- 記帳内容の確認と記帳指導
- 試算表の作成と経営状況の分析
- 税務上の処理が適正に行われているかのチェック
- 社長や経理担当者への経営アドバイス
- 手書き書類や領収書のスポット確認
- 次月への課題整理と対策提案
毎月コツコツと進めることで、決算時期にまとめてやる作業量が大幅に減ります。
クライアント側も、月次巡回監査を通じて自社の経営状況をリアルタイムで把握できるメリットがあります。
定期的な巡回監査は、税理士とクライアントの信頼関係を深める最高の機会です。
クライアント側が協力できることを理解する
税理士は忙しいから、クライアント側が気配りをしなくていいわけではありません。
むしろ、クライアント側の小さな工夫が、税理士の負担を大きく軽くします。
例えば、記帳に関する情報は毎月提出することで、一度にまとめて提出される場合の作業量を大幅に削減できます。
クレジットカードや銀行口座の記帳も、freeeや弥生会計などのクラウド会計ソフトを使って自動連携すれば、入力漏れやミスが減ります。
給与計算については、月ごとに正確にまとめておくことで、年末調整時の工数が減ります。
経理担当者が「毎月、月末に整理」という習慣をつけるだけで、税理士の繁忙期の負担は大きく軽くなるのです。
税理士も人間だから、コミュニケーションが全てを変える

緊急度を伝えることで、レスポンスが変わる
「税務調査の連絡が来ました。緊急で相談したいです」という依頼なら、税理士は即座に対応します。
一方、「来期の事業計画で税務面の注意点を知りたい」という相談なら、多少の時間的余裕があります。
このように、依頼事項の緊急度を明確に伝えることが大切です。
クライアント側が緊急度を判断してくれれば、税理士側も優先順位をつけやすくなります。
また、繁忙期と閑散期の違いを理解することも重要です。
12月から3月までは、多くの税理士事務所が忙しい時期です。
その時期に「この月末までに」という期限を切られると、税理士は対応するしかありません。
一方、6月から10月の閑散期なら、より丁寧な対応が期待できます。
繁忙期を避けて相談できる内容があれば、事前に相談することで、より質の高いアドバイスを受けられるのです。
「人らしさ」を忘れずに
税理士も顧問先も、結局のところ人間同士の関係です。
専門的な知識は必要ですが、それ以上に大切なのは相互理解と信頼です。
顧問先が税理士の立場を理解し、税理士がクライアントのビジネスを理解する。
その過程で生まれるコミュニケーションが、良好な関係を築きます。
税理士が繁忙期に疲れているなら、「いつもお疲れ様です」という一言の気配りも効果的です。
資料提出の際に、「お忙しいところ恐れ入りますが」という丁寧な言葉遣いも大切です。
これらは、ビジネスの基本ですが、繁忙期だからこそ忘れやすくなるものです。
効率化ツールとの付き合い方が、今の税理士には欠かせない
会計ソフトはもはや必須のパートナー
freeeや弥生会計、マネーフォワードといったクラウド会計ソフトは、今や税理士業務に欠かせないツールです。
freeeは特に、AI技術を活用した自動仕訳機能や、銀行口座・クレジットカードとの自動連携が強みです。
クライアント側が自動で取り込んだデータを税理士が確認する流れなら、手作業での入力ミスが大幅に減ります。
弥生会計は、税理士事務所との連携機能が充実しており、13,000以上の税理士事務所が採用しています。
仕訳の正確性や制度対応の安定性が評価されています。
これらのツールを導入しているクライアントとそうでないクライアントでは、税理士の作業時間に大きな差が出ます。
繁忙期を少しでも楽にしたいなら、クラウド会計ソフトの導入は早めが吉です。
RPA技術による自動化で、単純業務から解放される
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、単純な定型業務をソフトウェアロボットが代行する技術です。
例えば、Excelから会計ソフトへの転記業務をRPAで自動化すれば、作業時間を大幅に短縮できます。
領収書や請求書の情報を会計ソフトへ自動入力したり、定期的なリマインダーを自動送信したりすることも可能です。
繰り返し行う業務をRPAで自動化すれば、浮いた時間をコンサルティングや新規営業に充てられます。
結果として、クライアントへのサービス品質が高まり、顧問料の値上げも正当化しやすくなります。
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税理士の繁忙期は避けられません。
しかし、クライアント側が資料提出を心がけ、定期的な巡回監査を実施し、最新のツールを活用することで、その負担は大きく軽くなります。
そして何より、コミュニケーションを大切にすることが、長期的な信頼関係を築く基盤となるのです。
調査が完了しました。記事の内容をもとに、Q&A形式の5件の質問と回答を作成いたします。
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よくある質問と回答
Answer
決められた提出期限を守ることが、税理士との信頼関係を築く第一歩です。
一般的には、年末調整に必要な書類は12月中、できれば12月20日までの提出が目安とされています。
遅くとも12月25日までには揃えておきたいところです。
年末調整は1月31日が提出期限なので、税理士は限られた時間の中で複数のクライアントの書類を処理します。
もし期日に間に合わない事情があれば、早めに税理士に連絡することが大切です。
「何月何日までに出します」という報告があるだけで、税理士側の対応も大きく変わります。
無言で遅れるのではなく、コミュニケーションを取ることが何より重要です。
Answer
月次巡回監査は、企業規模を問わず導入をお勧めします。
むしろ小さい会社こそ、月次巡回監査の効果を実感しやすいです。
月次巡回監査は、毎月1回以上、税理士が訪問して記帳内容をチェックし、試算表を作成する業務です。
期中から定期的にチェックしておけば、決算時期の業務量が大幅に減ります。
結果として、税理士の対応も早くなり、決算書も早期に受け取れるようになります。
また、毎月の経営状況をリアルタイムで把握できるので、経営判断も的確になります。
年に1回だけ決算書を見るのではなく、毎月の試算表で経営を管理する習慣がつくことで、企業の成長につながるのです。
Answer
会計ソフト選びで最も大切なのは、顧問税理士が対応しているかどうかです。
税理士の確認を先にしてから選ぶことをお勧めします。
その上で、それぞれの特徴を理解しておくと良いでしょう。
freeeは、AI技術を活用した自動仕訳機能と銀行口座・クレジットカードとの自動連携が強みです。
クライアント側が自動で取り込んだデータを税理士が確認する流れなら、手作業での入力ミスが大幅に減ります。
弥生会計は、13,000以上の税理士事務所が採用しており、税理士事務所との連携機能が充実しています。
仕訳の正確性や制度対応の安定性が評価されています。
マネーフォワードは、複数の企業を経営している場合の管理機能が充実しています。
いずれのソフトでも、クラウド版を選べば、データが自動的にバックアップされ、どこからでもアクセスできます。
導入前に各ソフトの無料体験版を試して、自社に合ったものを選ぶことが大切です。
Answer
繁忙期は避けられませんが、税理士との連絡をスムーズにする工夫は十分できます。
最も大切なのは、依頼事項の緊急度を明確に伝えることです。
「税務調査の通知が来た。緊急で相談したい」という依頼なら、税理士は即座に対応します。
一方、「来期の事業計画について税務面の注意点を知りたい」という相談なら、時間的余裕があっても大丈夫です。
逆に言えば、緊急でない相談は繁忙期を避けて、6月から10月の比較的落ち着いた時期に持ちかけると、より丁寧で質の高いアドバイスが期待できます。
資料提出のときに「いつまでに必要か」を明示してもらうことも重要です。
「いつでもいい」と言われるより「3日以内にお願いします」と期限を切ってもらう方が、税理士も優先順位をつけやすくなります。
お互いの立場を理解し、こまめにコミュニケーションを取ることが、スムーズな対応につながるのです。
Answer
まずは、月ごとに経理データを整理する習慣をつけることから始めましょう。
月末に給与や経費をまとめ、月次試算表が作成できる状態にしておくだけで、税理士の作業は大幅に軽くなります。
次に、クラウド会計ソフトの導入を検討してください。
銀行口座やクレジットカードを自動連携させれば、入力作業がぐっと減ります。
給与計算については、毎月正確に計算し、給与台帳をまとめておくことが重要です。
年末調整時に「今年は給与がいくらだったか」が即座に出てくる状態にしておくと、税理士の作業が格段に早くなります。
さらに踏み込んで効率化したいなら、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用した自動化も検討の余地があります。
Excelから会計ソフトへの転記業務をRPAで自動化したり、定期的なリマインダーを自動送信したりすることで、単純業務から解放されます。
ただし、すべてを一度に導入する必要はありません。
まずは「月末に整理する習慣」から始めて、徐々にツールを取り入れていくことをお勧めします。
