税理士のみなさん、最新記事「命を危険にさらすAI、人と結婚するAI――擬人化がもたらす社会的リスク」(Forbes JAPAN公式サイト)は読みましたか。
本記事は、AIが「人間のように」振る舞うことで、人の心や社会に大きなリスクを及ぼす可能性を指摘しています。
今回はこの内容をわかりやすく整理し、税理士・会計士・経理担当の方が実務で意識すべきポイントを解説します。
まずは元記事を5つのポイントで要約します。
- AIは「意識があるように振る舞う」ことで人の心を強く揺さぶる。
- 人がAIに依存した結果、自殺や「AI結婚」といった事例もすでに発生している。
- 本当に危険なのは「AIの意識」ではなく、人がAIを人間扱いし始めること。
- 社会的・法的な混乱(AIの権利や人格の議論)が進む可能性がある。
- すでにチャットボットに関する悲劇的な事件や結婚の事例が現実化している。
この背景を踏まえ、税理士の立場からは「AIをどう業務に組み込み、どう距離をとるか」が重要になります。
Excelや弥生会計、freee、マネーフォワードクラウドなど、日常的に使うツールにAIがどんどん統合されていく時代。
便利さだけでなく、情報の扱い・依存リスク・法律面の変化を意識することが必要です。
以下から詳しく見ていきましょう。
AI依存が生むリスク
AIは「人間らしく」応答できるからこそ、気づかぬうちに依存してしまうことがあります。
税理士業務でAIチャットボットに質問を重ねていくうちに、「答えが正しい」と過信してしまう感覚が似ています。
数字に強い専門家でも陥る危うさ
AIが生成する回答は自然で説得力があるため、内容が誤っていても違和感が少ないです。
例えば、税務上の判例や改正法についてAIが答えを「それらしく」説明しても、細部がズレていることが多々あります。
これに気づかず申告書や助言に組み込んでしまえば大きなリスクです。
経理や会計ツールに潜む依存
freeeやマネーフォワードは仕訳提案機能にAIを導入しています。
仕訳の自動化は便利ですが、100%正しいとは限りません。知らぬ間に誤分類が続けば決算にも影響します。
つまり、人間のチェックと判断が欠かせないのです。
AIは補助ツールであり、判断の主体は人間に残すことが必須です。
AIと法的混乱
記事でも指摘されたように、AIを「人のように扱う」議論が進めば、税理士にも影響が出てきます。
特に契約や権利の扱いに関わる可能性があります。
契約書・電子署名とAI
会計事務所では顧問契約や電子署名システム(クラウドサインなど)を利用する場面が増えています。
今後、AIエージェントが書類作成に関与する場合、その責任は誰に帰属するのかという疑問が生まれます。
依頼人か、開発企業か、それとも税理士か。
税務における証拠能力
税務調査の場面で、もしAIが自動生成した帳票や議事録を証拠として提示する場合、信頼性をどのように担保するのか。
AIによる「言った・書いた」は曖昧になりがちで、裁判でも問題になるかもしれません。
会計現場でのAI活用の適正距離
税理士業務でのAI活用は必須ですが、取り入れ方を誤ると大きなトラブルを生みます。
記帳・仕訳の効率化とチェック体制
AIによる記帳自動化は効率的ですが、必ず人間の「ダブルチェック」が必要です。
具体的には、AI仕訳を自動承認にせず、弥生会計やマネフォ上で担当者が確認するフローを設けることが大切です。
顧問先への説明責任
顧問先がAIの説明を信じ込んでしまう可能性もあります。
「AIがこう言っていたから経費で落ちる」と顧客が主張した場合に備え、必ず税理士の監督責任を果たすスタンスが必要です。
税理士が取るべき実務対応
ここまでを踏まえて、税理士・会計士・経理担当が実務で気をつけるべきことを整理しました。
課題 | リスク | 対策 |
---|---|---|
AI依存 | 誤情報・誤判断 | 人のチェックを必須にする |
法的混乱 | 責任の所在不明 | 契約や説明にAI利用範囲を明記 |
自動仕訳 | 誤分類の蓄積 | 承認フロー設計 |
顧問先教育 | AIへの過信 | 定期的な説明と注意喚起 |
まとめと今後の視点
記事が示したように、AIが人間のように振る舞うことは便利であると同時に危険もはらんでいます。
税理士業務にAIを導入する際に求められるのは、スピードや効率化よりも「正確性」「責任の所在」「依存の防止」を重視する姿勢です。
ChatGPTや会計ツールのAI機能を試すことは有効ですが、常に「AIはアシスタント」という立場を忘れないこと。
信頼性を担保し、顧問先を守るために、税理士自身の判断力がこれまで以上に問われる時代に入っていると言えるでしょう。