税理士のみなさん、最新記事「Inside the playbook of companies winning with AI」は読みましたか。
この記事の内容を、税理士・会計士・経理担当の方に役立つ形で整理してお伝えします。

まずは、元記事を5つのポイントで要約します。

  • AIで成果を出している企業は全体の15%程度と少数派。
  • 彼らは「AIを事業戦略のど真ん中」に置き、成長エンジンとして位置づけている。
  • 全社で使うワークフローそのものをAI前提で組み替えることで、大きな成果を出している。
  • インフラ・セキュリティ・ガバナンスを整え、社員をAIで補助する「人×AI」の体制をつくっている。
  • 外部パートナーと組みながら、少数の重点領域に集中投資し、成功事例からさらに投資を回す“好循環”を作っている。

ここからは、この記事のエッセンスを「税理士・会計事務所・企業の経理部」でどう活かすかに絞って解説します。

AIを戦略の中心に置く税理士

Kling ベーシックプラン

これから伸びる税理士事務所は、AIを業務効率化の道具ではなく「事務所の成長戦略そのもの」に組み込んでいく必要があります。
記事のAIリーダー企業も同じで、「ちょっと便利なツール」扱いではなく、「売上と利益を伸ばすメインエンジン」としてAIを位置づけていました。

多くの事務所では、ChatGPTやCopilotを「とりあえず触ってみる」段階で止まりがちです。
しかしAIで差がつくのは、「所長・パートナーがどこまで本気でAIを戦略に組み込むか」で決まってきます。

どの業務をAIで伸ばすかを決める

AIリーダー企業は、「どこでAIを使うか」を明確に決めています。
税理士に置き換えると、たとえば次のような選び方です。

  • 新規顧客獲得(ウェブサイト・メルマガ・SNS発信の強化)
  • 既存顧客への提案力アップ(レポート・分析・シミュレーション)
  • 記帳やチェック業務の効率化(freee・マネーフォワード・弥生会計などとの組み合わせ)

全部を一度にやろうとすると、まず続きません。
記事でも「1〜2の領域に集中して、AI前提で作り変える」ことが成功のポイントと書かれていました。

「AIを前提にした事務所計画」をつくる

AIリーダー企業は、事業計画や中期計画の中に、AIをしっかり書き込んでいます。
税理士事務所であれば、こんなイメージです。

項目 従来の計画 AIを組み込んだ計画
売上目標 顧問先数×顧問料の積み上げ AI活用で生まれる時間を「コンサル・スポット案件」に振り向ける前提で目標設定
人員計画 顧問先◯件増で人を◯人増やす AIでの自動化前提で「少人数で高売上」を目指す

「AIでどれくらい時間が空くか」「空いた時間で何を売るか」。
ここまで落とし込めると、AIが“コスト”ではなく“投資”として見えてきます。

AIで税務・会計フローを組み替える

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AIリーダー企業は、既存のやり方にAIを“ちょい足し”するのではなく、業務プロセス全体をAI前提で作り直しているのが特徴です。
税務・会計の現場でも、発想を少し変えるだけで、大きく手間を減らせる余地があります。

たとえば「記帳→チェック→決算→申告」という流れを、AIをうまく噛ませながら再設計していくイメージです。

仕訳・チェックの流れをAI視点で見直す

実務でよく使うツール(freee、マネーフォワード、弥生会計、勘定奉行など)は、すでにAI・自動化機能をかなり搭載し始めています。
ここに、生成AI(ChatGPT、Claude、Copilot など)を「文章理解・要約・説明」に使うことで、フローを丸ごと変えられます。

たとえば、次のような組み立てです。

  • 証憑の読み取りはクラウド会計+OCRに任せる。
  • AIに「この月の仕訳の異常値」「前年同月と比べておかしいところ」を箇条書きで出させる。
  • 担当者は、そのAIが出した“怪しいポイント”に集中して目視確認する。

すべての仕訳を最初から最後まで同じ濃度でチェックするやり方から、「AIでアタリをつけて、人はそこを重点的に見る」スタイルへのシフトです。
これだけでも、月次の処理負荷はかなり違ってきます。

決算・レポートの作り方をAI向きに変える

記事のAIリーダー企業は、「アプリケーション自体をAI前提で作り直す」と書かれていました。
税務・会計の世界でいうと、「お客さまに渡す成果物」をAIが作りやすい形に変えていくことにつながります。

例えば、決算報告資料をつくるときに、最初から「AIに読み込ませやすいフォーマット」で数字とコメントをまとめておきます。
そのうえでChatGPTやCopilotに対し、

・「この決算のポイントを5つに整理して」
・「社長向けに平易な日本語で説明文を作って」
・「銀行向けの説明として、慎重めのトーンで文章を作って」

と指示すれば、パターンの違う文章を一気に生成できます。
担当者はそれを手直しすればよくなるので、「一から書く」時間をほとんど削れます。

人×AIで専門性を高める働き方

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記事では、「AIで人を置き換える」のではなく、「経験のある人をAIで強くする」という考え方が一貫していました。
税理士事務所でも、この視点がとても重要になってきます。

AIは“新人の代わり”ではなく、“ベテランの分身”として使う方がリターンが大きくなります。
つまり、エクセルが得意な職員ほど、AIを使いこなしたときの伸び幅が大きくなるイメージです。

若手には「AI前提のインプット」を覚えてもらう

若手スタッフには、まず「AIに仕事を振る前提でメモを取る」習慣を身につけてもらうと効きます。
たとえば、顧客との打ち合わせメモを、次のように整理しておくとAIが扱いやすくなります。

  • 顧客の状況(業種・規模・課題)
  • 顧客が気にしているポイント(資金繰り・節税・採用など)
  • 今後3か月でやるべきことのメモ

これをそのままChatGPTやCopilotに読み込ませて、
「この顧客に対して、次回打ち合わせで伝えるべきポイントを5つ整理して」
と投げると、議事録から提案メモまで一気に形になります。

若手は「素材集め」と「最終チェック・修正」に集中し、文章化や構成はAIに任せる。
こうすると、経験の浅さをAIで補いながら、早い段階から提案型の仕事に触れさせることができます。

ベテランは「判断と提案」に時間を振り向ける

ベテラン税理士・主査クラスは、AIに「文案づくり」や「たたき台作成」を任せることで、より高度な判断に時間を使えるようになります。
例えば、次のような形です。

  • AIにシミュレーション条件を与え、税効果の比較表を作ってもらう。
  • AIに顧客ごとのKPI(売上総利益率、固定費率など)の推移を要約させる。
  • AIに「銀行が気にしそうなリスクポイント」を抜き出させる。

そのうえで、ベテランが「どの選択肢が現実的か」「経営者の性格に合うか」を判断していく。
AIはあくまで材料づくりに徹し、人が最終判断を行うスタイルです。

こうした役割分担を前提にチームを組むと、「AIに詳しい人だけが得をする」のではなく、「事務所全体の底上げ」につながっていきます。

AI導入のルールとパートナー選び

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記事では、AIリーダー企業の共通点として「ガバナンス(ルールづくり)」と「パートナー戦略」が挙げられていました。
税理士・経理の現場では、ここがとくに重要になります。

AIを安全に、かつ長く使い続けるには、「ルール」と「外部パートナー」の2本立てで考えることが欠かせません。
なんとなく各自がバラバラにツールを使う状態は、情報漏えいリスクも高く、品質のバラつきも生みやすくなります。

事務所内のAIルールをシンプルに決める

まずは、小さくてもよいので「AI利用ポリシー」を決めておくと安心です。
たとえば、次のようなラインです。

  • 顧客名・具体的な数値・個人情報を含むデータは、パブリックなAI(無料版など)には入れない。
  • 顧客情報を扱うAIは、事務所で契約した有料版(ChatGPT Team/Enterprise、Copilot for Microsoft 365など)に限定する。
  • AIが作った文章・数値は必ず人が確認してから外部に出す。

これだけでも、「どこまでOKか」が職員に伝わりやすくなります。
ルールを明文化しておくと、職員も安心してAIを使えるようになり、活用が加速します。

会計ソフト+AI+外部パートナーの組み合わせ

記事では、多くのAIリーダー企業が外部パートナーをうまく使っていると紹介されていました。
税理士まわりだと、次のような組み合わせが現実的です。

具体例 期待できる効果
会計ソフト freee、マネーフォワード、弥生会計、勘定奉行 など 仕訳・証憑のAI補助、自動連携で手入力削減
生成AI基盤 ChatGPT(有料版)、Claude、Copilot for Microsoft 365 など 文章作成、要約、企画書・提案書のたたき台づくり
外部パートナー ITベンダー、AIに詳しい税理士、コンサルなど 導入設計、研修、ルールづくりのサポート

「自事務所だけで全部やる」のではなく、「自事務所=業務のプロ」「パートナー=AIとITのプロ」と割り切って組む。
この記事のリーダー企業も、まさにそうした役割分担でスピードを出していました。

税理士が今すぐ始められるAIアクション

最後に、この記事の内容を踏まえて、税理士・会計士・経理担当の方が「明日からできること」に落とし込んでみます。
難しいことから着手する必要はありません。
小さく試して、うまくいったものを広げる流れで十分です。

AI活用は、「1つの業務で成功体験を作り、それを横展開する」進め方が結果的にいちばん早く定着します。
記事でいう“AIのフライホイール(好循環)”を、事務所の中で再現していくイメージです。

まず1つの業務に絞ってAIを試す

おすすめは、次のいずれかからスタートする方法です。

  • 「決算報告書のコメント」だけAIでたたき台を作る。
  • 「顧問先向けニュースレター」の文章案をAIで作り、職員が修正する。
  • 「社内マニュアルやチェックリスト」のドラフトをAIに書かせる。

これらは、数字に直接影響するリスクが小さく、AIの得意分野(文章生成)なので、成果が見えやすいのがポイントです。
たとえば、月次レポートの「今月のポイント解説」をAIで毎回作り、それを所長が最終チェックするだけでも、かなり時間を節約できます。

うまくいったやり方をテンプレ化する

1つの領域で「これは使える」という型が見つかったら、それを事務所内のテンプレートにしてしまいます。
以下のような形です。

テンプレート 内容 使う場面
決算コメント用プロンプト AIに渡す指示文+決算データのまとめ方 決算報告書作成時
ニュースレター用プロンプト ターゲット、トーン、文字数などの条件セット 顧問先向け情報発信
社内マニュアル作成用プロンプト 業務手順の書き方とAIへの指示例 新人教育・標準化

こうした「AIに仕事を頼むための型」が事務所にたまっていくほど、職員のスキル差に関係なく、AIの力を引き出しやすくなります。
これは、記事のリーダー企業が言う「AIとビジネス戦略の一体化」を、税理士版に落とし込んだ形と言えます。

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この記事のポイントは、「AIを単なる効率化ツールで終わらせず、事務所の成長と付加価値向上の“核”に据えるかどうか」にあります。
会計ソフトやExcel、PowerPoint、Teams、Slackなど、今の環境に少しAIを足し算するだけでも、仕事の景色はかなり変わっていきます。

まずは「1つの業務に絞ってAI前提で組み直す」。
ここから、自分の事務所なりの“AIのフライホイール”を回し始めてみてはいかがでしょうか。

よくある質問と回答

Q1:AIは税理士の仕事を奪うのでしょうか?
Answer AIは、税理士の仕事を「奪う」というより、「中身を変える」存在と考えた方がしっくりきます。 記帳や定型的なチェックなど、手作業が多かった部分はどんどんAIに置き換わっていきますが、その分、資金繰りの相談や節税の提案、事業計画のアドバイスといった、人にしかできない部分の比重が増えていきます。
freeeやマネーフォワード、弥生会計といった会計ソフトも、すでにAIや自動仕訳機能を強化しています。
これを前提に仕事を組み立てていけば、「単なる入力・チェック業務」から、「経営者の右腕」としての役割にシフトしやすくなります。
AIに単純作業を任せて、自分は判断と提案に集中していくイメージですね。
Q2:何からAIを導入すれば良いか分かりません。
Answer 最初から事務所全体を変えようとすると、ほぼ確実に挫折します。 おすすめは「文章系の仕事」から始めることです。
例えば、次のようなものはAIと相性が良い領域です。
・決算報告書のコメント作成
・顧問先向けニュースレターやメルマガの文章
・社内マニュアルやチェックリストのたたき台ChatGPT(有料版)、Claude、Copilot for Microsoft 365 などを使い、まずは「たたき台をAIに作らせる→人が直す」流れを1つの業務で定着させてみてください。
ここで手応えをつかんでから、ほかの業務に広げていくとスムーズです。

Q3:顧客情報を扱うときのAIのセキュリティが心配です。
Answer セキュリティの不安がある状態でAIを使うと、どうしてもブレーキがかかってしまいます。 まずは、事務所としての「AI利用ルール」をシンプルで良いので決めておくと安心です。
例えば、
・顧客名や具体的な数値、個人情報を含むデータは、無料版のAIには入れない。
・顧客情報を扱う場合は、事務所で契約した有料版(ChatGPT Team/Enterprise、Copilot for Microsoft 365 など)に限定する。
・AIが出した内容は必ず職員かパートナーが確認してから外へ出す。これくらいのラインを明文化しておくと、職員も判断しやすくなります。
会計ソフト側もセキュリティに配慮したAI機能を提供し始めているので、「どの範囲まで預けられるのか」をベンダーに確認しながら整理していくと良いでしょう。

Q4:所内にITやAIに詳しい人がいないのですが、大丈夫でしょうか?
Answer AIリーダー企業も、最初から社内にAIの専門家がいたわけではなく、「外部パートナーとうまく組んでいる」点が共通しています。 税理士事務所でも、全部を自前で抱え込む必要はありません。
たとえば、
・会計ソフトの担当者やITベンダーに「AI活用の相談」をしてみる。
・AIに詳しい士業やコンサルとスポットで組んで、最初の設計だけ一緒にやってもらう。
・Microsoft 365 やGoogle Workspaceのパートナーに、CopilotやAI機能の使い方を教えてもらう。事務所側は「業務のプロ」、外部は「AIとITのプロ」と割り切って役割分担する方が、結果的に早く、安全に進めやすいです。
所長やパートナーは「方向性」と「優先順位」を決めることに集中すると、導入がぶれにくくなります。

Q5:職員がAIに抵抗感を持っていて、なかなか使ってくれません。
Answer 「AIを使えと言われても、よく分からないし怖い」という抵抗感は、どの組織でも起こりがちです。 いきなり全員に「今日からAI活用を!」と号令をかけるより、「小さな成功体験」を一緒に作る方がうまくいきます。
おすすめのやり方は、
・まず1〜2名の担当者と一緒に、決算コメントやニュースレターなどリスクの低い領域でAIを試す。
・うまくいった事例を、所内ミーティングやチャット(Teams、Slackなど)で共有する。
・「このプロンプトをコピペすればOK」というテンプレを配布して、ハードルを下げる。こうして「これなら便利だ」と感じる人を少しずつ増やしていくと、自然と広がっていきます。
無理に全員同じスピードで進める必要はありませんが、所長やリーダー層が実際に使っている姿を見せると、安心感もぐっと高まります。